概要Vision
ロジスティクスの未来をつくる大学
現在、物流・ロジスティクス分野は人手不足をはじめとする危機に直面するとともに、IoTやAIなどの進化によって、転換期を迎えています。
高度なロジスティクスへの変革が要請される今、流通経済大学は国内外のロジスティクス・イノベーションの研究・教育を主導するべく、研究拠点の形成と人材育成に取り組んでまいります。
「流通経済一般に関する研究と教育を振興する」という建学の精神をもって社会に貢献し続けていくことが本学の使命です。
【事業概念図】
事業の目的Purpose
日本政府が目指す「Society 5.0」、すなわち超スマート社会とは、「必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会のさまざまなニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられる社会」と定義され、ロジスティクスが目指すところと同じである。しかしながら現在、物流、ロジスティクス分野は、人手不足に端を発した物流危機に直面し、従来のシステムでは立ちいかなくなっており、抜本的な改革が要請されている。
一方、IoT、AI、ロボットなどの進展は、ロジスティクスを今後大きく変革していくことが予想され、その点においても、ロジスティクスは大きな転換期を迎えている。
国土交通省による「総合物流施策大綱(2017~2020年度)」においては、「①今後の社会構造の変化やニーズの変化に的確に対応するとともに、②人材や設備等の資源を最大限活用してムダのない構造を構築し、③第4次産業革命への対応も含め「高い付加価値を生み出す物流」へと変革することが必要である」としている。高度なロジスティクスを実現するためには、ロジスティクス・イノベーションが欠かせず、その実現を支える研究拠点の形成と高度なロジスティクス人材の育成が欠かせない。
世界の経済、産業を取り巻く諸環境が近年急速に変化し、わが国政府においても、予想される変革に対応すべく諸施策が取られつつある中で、産業界、社会に向けて、時代を先取りした研究、教育を行い、新しい社会の要請に的確に対応する人材を育成することが本事業の目的である。
期待される研究成果Achievement
本事業で期待される主要な成果は、以下の3プロジェクトの達成である。なお、国土交通省による「総合物流施策大綱(2017~2020年度)」において、「強い物流」を実現するための視点として「繋がる」「見える」「支える」「備える」「革命的に変化する」「育てる」の6つが掲げられているが、本事業における研究体制の形成は、特に「革命的に変化する」「繋がる」「支える」「備える」の実現に、人材育成は「育てる」に繋がるものである。
1. 社会システムとロジスティクスに関する研究拠点の形成
本プロジェクトでは「ロジスティクスの高度化」「社会、生活を支えるロジスティクス」「新たな分野でのロジスティクス展開」の3つのテーマを研究するワーキンググループ(WG)を発足する。
社会システムと高度ロジスティクス検討WGについて
近年のIoT、AI、ロボットなどの進展は、ロジスティクスに大きな変革をもたらすことが予想される。物流現場において、無人走行によるトラック、ドローン、さらに物流センター内の自動化、無人化などの変革をもたらす。同時に、現場レベルの変革だけではなく、物流産業が従来の労働集約型から装置型産業に転換するほか、物流技術、情報技術を駆使したプラットフォーム型に転換していくことが予想される。また、サプライチェーンから見ても、生産、販売とロジスティクスが統合、融合し、生産方式が変化する一方で、より付加価値を高めるバリューチェーンへの転換が予想される。
本検討WGでは、IoT、AI、ロボットなどの進展がロジスティクスにどのような変革をもたらすか、さらにロジスティクス変革が経済、産業全体に与える影響について、中長期的なロジスティクス・イノベーションのロードマップを提示するものである。同時に、社会が求める新たなロジスティクス像について検討する。
社会を支えるロジスティクス検討WGについて
本検討WGでは、特にロジスティクスにおける災害対応を中心に検討する。東日本大震災発生時においては、政府、地方自治体による緊急支援物資が避難所等に供給されない、企業においても、商品が供給できない、サプライチェーンの途絶といった問題が発生した。本検討WGでは、これらの問題に対応するべく、リダンダンシーのあるロジスティクスシステム構築に向けての、問題点、課題の抽出、今後の対応のあり方について検討する。特に、災害時対応は、公共だけ、あるいは企業単独での対応が難しく、官民連携、企業間連携による取り組みについて検討し、提言する。
新たな分野でのロジスティクス展開検討WG
本検討WGでは、新たな分野でのロジスティクス展開の一環として、スポーツ分野のロジスティクスについて検討する。スポーツとロジスティクスとは関連性が強く、例えばオリンピック運営開催においてもロジスティクス管理が欠かせない。現状では、スポーツ・ロジスティクスという概念はないが、本検討WGでは、両者のかかわりを整理し、スポーツの付加価値向上に資するロジスティクスシステムについて検討する。
2. 地域とロジスティクスに関する研究拠点の形成
本プロジェクトでは「地域活性化とロジスティクス」「地域生活を支えるロジスティクス」の2つのテーマを研究するWGを発足する。
地域活性化とロジスティクス検討WGについて
地方創生がいわれるなか、地域経済、産業を支えるロジスティクスの重要性は欠かせない。一方、茨城県の農業産出額は全国2位であり、さらに様々な特徴ある農産品、地域産品を有している。しかしながら、その知名度は低く、評価も必ずしも高くないのも実態である。その一因として、流通ルートの開拓が限られ、ロジスティクスシステムの整備も遅れていることが考えられる。
本検討WGでは、地域産品等の県内向け、首都圏向け、全国向け、海外向けの流通ルート、ロジスティクスシステムの構築のあり方について検討し、地域の活性化につながるプロジェクトに展開していく。同時に、地域と企業活動の共生を目指すため、ロジスティクス分野におけるCSV(Creating Shared Value)の取り組み、さらに自治体との包括連携協定への展開も含めて検討する。
地域を支えるラストワンマイル検討WGについて
人口減少、過疎化が進展するなか、買い物弱者等の問題が顕在化し、ラストワンマイルに関連するロジスティクスの重要性が指摘されている。一方で、過疎地を中心として、集配密度が低下するなか、効率性とコスト面から、物流サービスを今後も持続できるかが課題となっている。ラストワンマイルに関連しては、宅配便だけでなく、店舗からの宅配、農産物の集荷、見守りサービスなどを総合的に展開していくことが重要であり、さらにトラックだけでなく、バス、タクシーなども含めたサービス提供が考えられる。このような状況のなか、地域の生活を支える持続的なロジスティクスシステム構築を検討、提示するものであり、過疎地、ニュータウン等でのプロジェクトに展開していく。
3. 高度なロジスティクス人材の育成
本プロジェクトでは「産学連携プログラムによる学生の育成と業界への輩出」「留学生を対象としたプログラムの検討」「小学生、中学生、高校生への広報、啓発」の3テーマを掲げ、実行する。
産学連携プログラムによる学生の育成と業界への輩出
2008年度以降、本学では産学連携プログラムを展開しており、現在企業講師(88名)による実践講座7科目、企業訪問による講座、企業現場の改善を考える演習を開講しており、受講生からも高い評価を得ている。さらに、産学連携プログラムをPDCAによりマネジメントするロジスティクス産学連携コンソーシアム(業界団体、企業委員14名と教員で構成)も2011年度以降開催している。今後も、ロジスティクス産学連携プログラムを充実するべく検討し、高度なロジスティクス人材を育成し、業界に輩出していく。また、IoT、AI、ロボット等を学生が実体験できるプログラムを実施する。
留学生を対象としたプログラムの検討
ロジスティクスに興味を持つ留学生が多くいることから、留学生対応のプログラムを開発する。その際、海外の政府、大学、業界団体等との連携も含めて検討する。
小学生、中学生、高校生への広報、啓発
東日本大震災、さらに最近の物流業界での人手不足の問題などが、報道されるなか、ロジスティクスの重要性は、以前よりは社会一般で認知されるようになってきている。また、学習指導要領において物流関連記述が盛り込まれ、今後、教科書、教材への記述が議論となるところである。しかしながら、小学生、中学生、高校生などのロジスティクスに関する認知度、興味が著しく低いのが現状である。このような状況のなか、小学生、中学生、高校生を対象としたテキスト、視聴覚メディア等の開発を目指すほか、シンポジウム、模擬授業などを通じて小学生、中学生、高校生への広報、啓発活動を実施していく。